色平:「海と毒薬」の真実

「海と毒薬」の真実 

日経メディカル 2021年2月26日 色平哲郎

新型コロナウイルス感染症の治療に当たる医療現場は、しばしば戦場にたとえられるが、まさかウイルスと医
療者の戦いを本物の戦争と同一視する人はいないだろう。コロナ治療は、平和だからできているのである。

弥生3月は先の大戦の記憶を呼び起こす。1945年3月10日、東京の都市部はアメリカ軍による無差別攻撃で、一
晩に8万4000人以上の命が奪われた(警視庁史編さん委員会編『警視庁史 昭和前編』、1962)。この東京大空
襲で、一夜にして東京市街地の東半分、区部面積の3分の1が焼失し、大量の戦争孤児が発生している。

つくづく戦争とは恐ろしいものだと思う。平和あっての医療であり、戦争は医療をすさまじく、ねじ曲げる。

作家・遠藤周作の『海と毒薬』という小説をお読みになった方は多いと思う。これは太平洋戦争末期、九州の
大学附属病院における米軍捕虜の生体解剖事件を小説化し、「日本人はいかなる人間か」を追究した作品だ。
どのような精神的倫理的な真空が、医師を残虐行為に駆り立てたのか、重い問いを投げかけてくる。

遠藤は、この続編を書こうとして断念している。事件に関係した人たちから手紙をもらい、小説によって自分
たちに裁断を下し、非難したと抗議されたようだ。「罪」以降を生きている当事者にとって、内面的な「罰」
は、日々、続いている。そこを暴かれた気がしたのだろうか。続編を書けば、さらに傷に塩をすり込むことに
なりかねず、遠藤は断念したと思われる。

実は、事件の当事者の1人の手記『戦争医学の汚辱にふれて──生体解剖事件始末記──』 (文藝春秋1957年12
月号 平光吾一著)がネット上の電子図書館「青空文庫」で公開されている。
https://www.aozora.gr.jp/cards/002008/files/59172_68021.html
これを読むと、フィクションではない、本当の事実関係が見えてくる。

そもそも戦争中、大学医学部は「戦時医学の研究」を軍から命じられていた。傷病兵の治療などを通して、大
学と軍は馴れ合う。西部軍司令部には、米軍飛行士が捕縛されていた。そこに大本営から「米軍飛行士の中、
無差別爆撃を行った事実あるものは速かに断罪すべし」と命令が下る。西部軍法務部は30数名の捕虜に死刑を
宣告し、一部の捕虜は福岡大空襲の翌朝、斬殺された。一方で西部軍首脳部には捕虜処刑をもっと有意義な方
法で断行すべきだとの意見があり、「戦争医学」を進歩させる実験台に捕虜を使うこと、いわゆる生体解剖が
実行されたのだった。

執刀した外科部長は、取り調べ中に自決し、正確な記録を残さなかった。手記の著者は、こうつづっている。

「彼(外科部長)のとった手段はやり過ぎだったとしても、決して捕虜を徒殺したわけではなかった。たゞ惜し
むらくは、この手術に関する記録を全く残しておかなかったことである。第二次大戦中ドイツのブラントとい
う博士は、石山氏と同じく捕虜に対する実験手術を行い、その助手と共に絞首刑に処せられたが、彼はその時
の研究記録一切を残していた。そのため、戦後のドイツ外科医学は、それによって大いに向上したという例が
あるからである」

平時の倫理観からすれば「戦争医学」のための生体実験が許されるはずもない。しかし、筆者は次のように真
情を吐露している。

「無差別爆撃し、無辜の市民を殺害した上、捕縛された敵国軍人が、国土防衛に任ずる軍隊から殺されるのは
当然だと思った。まして当時たゞ一人の伜をレイテ島で失った私にすれば、それが戦争であり、自然の成行き
なのだと信じていた」

戦争は報復の連鎖を生み、人間を内面から破壊する。

平和あっての医療である。

https://nkbp.jp/3urrQZo

ーーーーー
コメント:戦争は「国家の神話」*による真理・倫理の否定、無智・無恥の最低・最悪の人間の悪業である。自国人の罪(殺生・窃盗・虚偽・暴行等)が他国人には適用されない人類・生類の生命・自由・平等・平和などの普遍法(一切が因縁生起のなかで相依相対)の否定である。
戦争と言う思想・行為・制度は自己中心(我見・我利・我執・我慢:高慢)の宇宙生命史・生命全体(集団・社会・生態・環境)に対する犯罪である。戦争は(都市・国民)国家という金字塔文明(都市化:城砦化:植民化・征服か)発生と共にあるもので人類史(500万年)の歴史からすればその1000ぶんの1にしかあたらない極最近のもので生命史(40億年)の歴史からすれば極小期間の現象である。
この故に戦争制度そのものは虚偽・野蛮・悪列のみであり廃止すべきであるという運動が都市革命(文明革命)に対する反動として精神革命(文化革命・主教革命)が2500年前から始まり、現在世俗社会でも拡大しつつある(米国の「清掃超越世界:World BEYOND War]
等。)。大衆は声なき衆生・生系の為に覚醒・活動すべきである。
 
*エルンスト・カッシラーに同名の著作があり、その為に勲章・爵位などが利用されるとしている。・
金字塔文明から命帝網文化への枠組転換については下記をご参照頂ければ幸甚です:
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