広島と長崎に原爆が落とされた年に生まれ、「核」を手放せない戦後とともに歩んできた。俳優の吉永小百合さん(69)。被爆地や原発事故で苦しむ福島への思いが詩の朗読を通して伝わり、共有してほしいと願う。核とどう向き合えばいいのか。インタビューでは「命を守る」という視点の大切さを訴えた。

■思いを受け止め、伝えたい

――詩の朗読で自ら選んだ一つが、「にんげんをかえせ」で知られる詩人・峠三吉の「原爆詩集 序」でした。

「どんな朗読会でも最初に読む、まさに『序』なんです。峠さんのすべての思いが詰まっています。まったく原爆のことを知らない方でも、『えっ』という思いになってくださる気がするので、日本語と英語で読むようにしているんです」

「本当のことを言えば、もっと強い表現の詩がたくさんあります。ただ、それを直接読んでしまうと、最初から『そういうものは聞きたくない』っていう方の拒否反応があると思うんです。最初に分かりやすく、やさしく読んで、『あぁ、こういう詩があったんだ。じゃあ違う詩も読んでみよう』と思ってくだされば一番いい。そういう詩を中心に読んできました」

――朗読の手応えは。

「私の力は小さくて、大きくならないんですけど、例えば朗読を聴いた学校の先生たちが子どもたちに教えてくださり、その時の生徒が今、先生になって、ご自身が子どもたちに教えてくださっている。そういうことが大事なんですね。受け止めてくださった方が、また次に伝える。それが被爆者の方たちの一番の願いだと思うし、ご年齢的にもなかなか、先頭に立って動けない場合もあるから、私たちがその思いを受け止めて伝えていかないと」

「そうすると、全然そういうことを知らない、知ろうともしない人たちにどうやって分かって頂くかが一番の問題でしょうね。スティーブン・オカザキという日系アメリカ人の監督がドキュメンタリーの冒頭で渋谷の女子学生にインタビューして、『1945年8月6日に何が起きたか知ってる』って聞いたら、『えー、知らない、地震?』って。鳥肌が立つほど悲しかったんですよね。そんなことが日本であってはいけない。みんながあのときの痛みを分かろうとしないといけないと思います」